第二十四話 影より先の手
# 第二十四話 影より先の手
前方の暗がりから聞こえた金属の摩擦音は短かったが、あまりにも明瞭で聞き間違いにはできなかった。
三人の歩みが同時に止まった。構造物の内側は元々静かだったが、その瞬間の沈黙はもっと鋭かった。遠くから聞こえる残骸の振動、船側からかすかに上がるハン・ジウの船の維持音、そしてすぐ前の暗がりのどこかにまだ誰かがいるという確信だけが残った。
シオンはごく浅く息を吸った。油の匂い、金属の埃、古いオゾンの残響。その間にごく微かに新しい気配が混じっていた。血ではなく、燃焼の痕跡でもなかった。代わりに長く動いた人間の衣服から漂いそうな乾いた繊維の残り香と、金属の表面を頻繁に触る人間の指先に残る手触りに近かった。
彼はほとんど口の形だけで言った。
「いる」
セルンがさらに低く答えた。
「はい」
アテルは何も言わずに視線を暗がりの奥の狭い接続部に固定した。今の音は不注意で出した音というより、止まる場所を再び定めるときに生じた音に近かった。つまり相手もこの構造を読んでおり、単に逃げている最中ではなく、どこで耐えるべきかを知っている人間だ。
近距離チャネル越しにソリンの声が低く入ってきた。
「追いつく?」
シオンはすぐ首を振った。
「まだ」
この狭さの構造の中で先に走れば、追う側ではなく引っかかる側になりかねない。誰が先に来たかよりも、誰が先にしくじるかが大事な距離だった。
セルンが囁くように言った。
「右上の骨組みに空きがあります。人一人が一度身を隠してから方向を変えられる幅です」
シオンはごく小さくうなずいただけだった。
「俺も見えてる」
アテルはその骨組みの下を見ながら付け加えた。
「完全に行き止まりではありません。隠れる場所であると同時に、次の離脱線を見る場所でもありますね」
シオンはその言葉にしばし口の端を上げた。
「やっと同じ方を見てるな」
そしてまさにそのとき、前方の暗がりがごくかすかに動いた。
人が姿を現したわけではなかった。代わりに構造物の隙間の向こう、死んだ照明の残光をほんの一瞬だけ遮るように、外套の裾のような影が一つかすめて通り過ぎた。短すぎて顔はもちろん体型も完全には掴めなかった。だが一つだけは明らかだった。
相手もこちらが追いついたことを分かっていた。
近距離チャネル越しにソリンがごく低く呟いた。
「気づかれたね」
セルンがより冷たく言った。
「最初から気づいていた可能性もあります」
シオンはその言葉にすぐ反応しなかった。代わりにたった今影が消えた位置を最後まで見ていた。相手は単に隠れる側ではなく、追跡されている事実まで計算しながら後退するタイプだ。こういう手合いは怯えて逃げるよりも、追う人間をもう一度読み間違えさせようとする。
アテルが静かに言った。
「誘い込みかもしれません」
「分かってる」
シオンも低く答えた。
「でもここまで入った以上、踏まないわけにもいかない」
その言葉は現場についた三人と船に残った二人の双方に等しく当てはまった。ここを下手に触れば残った判別反応が死に、もっと大きな欠片を握った手も一緒に逃す。反対に遅すぎれば相手は次の離脱線で消える。この距離ではためらいがそのまま損失だった。
ハン・ジウの声がごく小さく通信線の中をかすめた。
「そっちの反応、上がってる」
ソリンがすぐ訊いた。
「どっちの」
「構造物の外側はまだ静かだけど、内側の金属反応が少しずつ目を覚ましてる」
ハン・ジウが低く言った。
「誰かが通りすぎながら一部の反応をまた触った感じだ」
セルンの視線が沈んだ。
「逃げながら痕跡を消したのではなく、むしろ残したということです」
アテルがその言葉を引き継ぐように言った。
「こちらを引き込んでいますね」
短い静寂。
その言葉が落ちた瞬間、シオンはむしろ確信が固まった。相手が怯えて落とした欠片ならこんな動きはしない。これはもっと大きな欠片を先に抜いた上で、最低限追跡者を制御できると踏んでいる側の動きだ。つまり単なる伝達役ではない。
彼はごく低く言った。
「俺たちより先に読んだ奴だな」
近距離チャネル越しにソリンが短く訊いた。
「それはいい話?」
「全然」
シオンは構造物内側の狭い接続部にもう一歩近づいた。足元の金属板は不安定だったが、さっきセルンが示した荷重線に沿えば持ちこたえられた。セルンは後ろでその足順をずっと見ており、アテルは壁面の跡と毀損パターンを読みながら、相手が選びそうな次の離脱線だけを見ていた。
三人の動きは最初よりもずっとぎこちなくなかった。まだチームとは呼べなかった。だが少なくともこの狭い構造の中では、各自が何を見るべきかがほぼ重なりつつあった。
前方の影の端で、もう一度金属がかすめた。
今度は音の後に、ごく短い残光が伴った。
何か薄い板面が暗がりの中で一瞬だけ光を反射して消えたように。
シオンの目の色が一瞬で変わった。
「見えたな」
アテルも同じ地点を見ていた。
「はい」
セルンがごく低く言った。
「板面です」
近距離チャネル越しにソリンが眉間を寄せた。
「もっと大きな欠片?」
「たぶん」
シオンが答えた。
「ただの装備ならあんな持ち方で動かない」
短い静寂。
その欠片は今、誰かの手の中にあった。
そしてその事実一つだけで、これまでのすべての仮説がもう一段現実になった。誰かがこの道を先に読み、もっと大きな欠片を抜き、まだそれを手から放さずに動いていた。
ハン・ジウがまた囁くように言った。
「長くは持たないよ。構造物の反応が大きくなってる」
シオンは前を見ながらごくゆっくり息を整えた。
今ここで捕まえれば、少なくとももっと大きな欠片はすぐ手に入るかもしれない。だが無理をすれば構造物全体が揺れかねない。反対にゆっくりしすぎれば、相手はもっと深い離脱線に消えてしまう。
アテルが低く言った。
「シオン」
「何」
「この距離なら、次の角で一度止まります」
シオンが短く訊き返した。
「確か?」
「はい」
アテルの声は冷たく明瞭だった。
「あの構造を読む人間なら、すぐには走りません。次の判別部を見るために一度息を整えるはずです」
セルンがその言葉をすぐ受けた。
「そしてそのときがいちばん近い」
シオンは二人を一度ずつ見た。一人は構造を読み、一人は順序を読む。二人とも自分とは違う言語を使っているのに、今は不思議とみな同じ答えに集まっていた。
彼はごく低く言った。
「次の角で捕まえる」
そしてまさにその瞬間、角の向こうからごく短く浅い息が一つ漏れた。単なる足音や金属の摩擦ではなく、重さのあるものを持ったままほんの間止まった人間だけが出せる、生きた呼吸だった。
三人の視線が同時にその暗がりの端に集まり、チャネルの向こうの沈黙も一緒に固まった。
もっと大きな欠片を先に持ち去った手は、本当にまだすぐそこにいた。